【生前贈与】税金だけで安心は危険?特別受益と持戻し免除

「生前贈与は3年経てば相続に関係ない?」
「昔もらった援助で、兄弟の取り分が変わることはある?」

生前贈与と聞くと、まず相続税や贈与税を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、相続の現場で揉めやすいのは、税金の計算だけではなく、兄弟姉妹で遺産をどう分けるかという民法上の問題です。

今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、アローネ・コンサルティング代表で税理士・司法書士などの資格を持つ鎌田諭先生の解説を元に、生前贈与における税法と民法の違い、特別受益、持戻し免除の意思表示、事業承継で注意したい自社株の遺留分対策について解説します。

目次

【重要ポイント】生前贈与で揉めないための民法ルール

この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。

  • 税法の考え方: 相続税の計算では、亡くなる前の一定期間内の贈与を相続財産に加算するルールがある。
  • 民法の考え方: 遺産分割では、特定の相続人が受けた生前贈与が「特別受益」として問題になることがある。
  • 大きな違い: 民法上の特別受益は、税法の3年・7年という期間とは別に考える必要がある。
  • 揉めない対策: 贈与した人が、遺言書などで「持戻し免除の意思表示」を残しておくことが重要。
  • 事業承継の注意点: 自社株の生前贈与では、株価上昇と遺留分の関係に注意し、経営承継円滑化法の活用も検討する。

生前贈与は「税金」と「遺産分割」でルールが違う

宇野さん(相談者): 親から10年以上前に住宅購入資金を援助してもらいました。相続税では、亡くなる前3年や7年の贈与が問題になると聞いたのですが、それより前なら遺産分割でも関係ないのでしょうか?

大村(専門家): そこは混同しやすいポイントです。相続税を計算する税法のルールと、兄弟姉妹で遺産を分ける民法のルールは別物です。今回は、税務と法務の両方に詳しい鎌田先生に詳しく解説していただきます。

鎌田(税理士・司法書士): 税法では、相続開始前の一定期間内に受けた贈与を相続財産に加算するルールがあります。一方、民法では、特定の相続人だけが受けた住宅購入資金の援助などが「特別受益」として扱われることがあります。これは、相続人同士の公平を調整するための考え方です。

宇野さん(相談者): 税金の対象期間を過ぎていても、兄弟から「昔もらった分を考慮してほしい」と言われる可能性があるんですね。

鎌田(税理士・司法書士): はい。税法上の加算期間だけを見て「もう関係ない」と考えてしまうと、遺産分割の場面で思わぬトラブルになることがあります。

特別受益とは?昔の援助が相続争いになる理由

宇野さん(相談者): 特別受益というのは、親から一部の子どもだけがもらった援助のことですか?

鎌田(税理士・司法書士): 代表例は、住宅購入資金の援助や、特定の子どもだけに行った大きな贈与です。民法では、残っている遺産だけを単純に分けると不公平になる場合、過去の贈与を考慮して相続分を計算することがあります。

特別受益で押さえたい特徴

  • 概要: 特定の相続人が、被相続人から生前に受けた特別な利益を遺産分割で考慮する考え方。
  • 対象例: 住宅購入資金の援助、不動産の贈与、事業承継のための自社株贈与など。
  • 注意点: 税法上の贈与加算期間と、民法上の特別受益の考え方は一致しない。
  • 評価の問題: 不動産や自社株など価値が変動する財産では、評価額をめぐって争いになりやすい。

大村(専門家): 不動産の場合、贈与を受けた時より相続発生時の価値が上がっていると、評価をめぐって対立しやすくなります。「当時はいくらだったのか」「今はいくらで見るべきか」という話が、親族間の感情問題に発展することもあります。

宇野さん(相談者): 税金の話だけではなく、誰がどれだけもらったかという記録や説明も大事なんですね。

持戻し免除の意思表示でトラブルを防ぐ

宇野さん(相談者): 親としては、子どもを困らせるつもりで援助したわけではないと思います。後から揉めないためにできることはありますか?

鎌田(税理士・司法書士): 重要なのが「持戻し免除の意思表示」です。贈与した人が、「この生前贈与は遺産分割の計算に持ち戻さなくてよい」という意思を明らかにしておく方法です。

大村(専門家): 実務上は、遺言書の中に明記しておくことが有効です。口頭で伝えただけでは、相続発生後に「聞いていない」「そんな趣旨ではなかった」と争われる可能性があります。贈与の理由や親の意思を、きちんと形に残しておくことが大切です。

持戻し免除の意思表示で押さえたい特徴

  • 概要: 生前贈与を遺産分割の計算に加えないでほしい、という贈与者の意思表示。
  • メリット: 贈与を受けた相続人の取り分をめぐる争いを予防しやすい。
  • 方法: 遺言書など、後から確認できる形で明確に残しておくことが重要。
  • 注意点: 遺留分の問題まで完全に消せる制度ではないため、全体設計が必要。

自社株の生前贈与は遺留分にも注意

宇野さん(相談者): 会社を継ぐ子どもに自社株を生前贈与する場合も、同じように注意が必要ですか?

鎌田(税理士・司法書士): はい。自社株は、事業承継で特に注意が必要な財産です。贈与を受けた後、後継者の努力で会社の価値が上がると、相続発生時の株価が高くなり、他の相続人からの遺留分請求が大きくなる可能性があります。

大村(専門家): 会社を守るために頑張った結果、かえって支払うべき遺留分が増えるとなると、後継者にとっては大きな負担です。動画でも紹介されている通り、経営承継円滑化法に基づく民法の特例を使い、自社株を遺留分の対象から除外する合意や、評価額を固定する合意を検討することがあります。

宇野さん(相談者): 生前贈与は、税金を減らすためだけの話ではなく、家族や会社を守るための設計なんですね。

鎌田(税理士・司法書士): その通りです。税務、民法、事業承継を分けて考えず、全体を見て準備することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもの学費や生活費も特別受益になりますか?

A. 通常の扶養の範囲内と考えられる学費や生活費は、直ちに特別受益になるとは限りません。ただし、兄弟姉妹の中で一人だけが高額な援助を受けている場合など、事情によっては問題になることがあります。

Q2. 持戻し免除の意思表示があれば、遺留分も請求されませんか?

A. 持戻し免除は、主に遺産分割で特別受益をどう扱うかに関わるものです。遺留分の問題まで必ず防げるわけではありません。遺留分を侵害する可能性がある場合は、遺言や贈与の設計を専門家と確認する必要があります。

Q3. 生前贈与をするなら、税理士だけに相談すれば十分ですか?

A. 税金の試算は税理士への相談が重要ですが、遺産分割、遺留分、不動産の名義、事業承継まで関わる場合は、司法書士や弁護士、不動産会社との連携も大切です。税法と民法の両面から確認することで、相続後のトラブルを減らしやすくなります。

まとめ

生前贈与は、相続税対策として有効な場面がある一方で、民法上の特別受益や遺留分を見落とすと、相続発生後に親族間の争いにつながることがあります。

  • 個人の生前贈与: 税法の加算期間だけで判断せず、遺産分割で特別受益として扱われる可能性を確認する。
  • 事業承継の自社株: 株価上昇と遺留分の関係を踏まえ、経営承継円滑化法の特例も含めて検討する。

過去の贈与や今後の生前対策に不安がある方は、財産の内容、家族関係、不動産の評価を整理し、税務と法務の両面から早めに相談しておきましょう。

【専門家・大村武司の補足】 生前贈与加算の7年への延長は、令和6年(2024年)以降の贈与から段階的に適用されています。ただし、相続で家族が揉める原因は税金だけではありません。不動産や自社株のように価値が変動する財産がある場合は、税理士・司法書士・弁護士と連携しながら、民法上の持戻しや遺留分まで含めて確認することが大切です。

ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。

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