「毎年110万円までなら、相続税対策として安心?」
「孫に贈与すれば7年ルールを避けられる?」
生前贈与は、相続税対策としてよく知られています。しかし、税制改正により、亡くなる前の贈与を相続財産に足し戻す期間が見直され、期待した効果が出ないことがあります。
今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、公認会計士・税理士の油野佳美先生の解説を元に、生前贈与の税法上の基本ルールと、2024年以降に注意したい制度改正について解説します。
【重要ポイント】生前贈与で損をしないための税法ルール
この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。
- 贈与の制度: 生前贈与には、暦年課税と相続時精算課税がある。
- 贈与税の税率: 110万円を超える贈与には累進課税で贈与税がかかる。
- 7年ルール: 暦年課税の生前贈与加算は、令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から段階的に7年へ延長されている。
- 孫への贈与: 孫は原則として加算対象外になりやすいが、生命保険金の受取人などで相続財産を取得すると対象になることがある。
- 精算課税の新ルール: 相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができたが、一度選ぶと暦年課税には戻れない。
生前贈与の基本は「暦年課税」と「相続時精算課税」
宇野さん(相談者): 親の財産を少しずつ生前贈与してもらえば、相続税対策になりますよね。毎年110万円までなら税金がかからないと聞いたことがあります。
大村(専門家): その考え方はよく知られています。生前贈与には大きく分けて、暦年課税と相続時精算課税の2つがあります。今回は税務の専門家である油野先生に、制度の違いから整理していただきます。
油野(税理士): 暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産について、110万円までの基礎控除がある制度です。110万円を超える部分には贈与税がかかります。
宇野さん(相談者): もう一つの相続時精算課税は、どう違うのでしょうか?
油野(税理士): 相続時精算課税は、累計2,500万円まで贈与税がかからない代わりに、贈与した人が亡くなった時に、その贈与分を相続財産に加えて相続税で精算する制度です。
2つの贈与制度の特徴
- 暦年課税: 1年間に受けた贈与額から110万円を控除し、超えた部分に贈与税がかかる。
- 相続時精算課税: 累計2,500万円までの特別控除があり、相続時に贈与分を相続財産へ加えて精算する。
- 注意点: 相続時精算課税を一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻ることはできない。
- 判断基準: 財産額や贈与したい金額により、有利不利が変わる。
生前贈与加算が7年へ延長された理由と注意点
宇野さん(相談者): それなら、親が元気なうちから毎年110万円ずつ贈与してもらえば確実でしょうか?
油野(税理士): そこが今回の大きな注意点です。亡くなる直前の駆け込み贈与を防ぐために、相続開始前の一定期間内の贈与を相続財産に足し戻す「生前贈与加算」というルールがあります。
大村(専門家): 以前は3年というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、令和6年(2024年)1月1日以降の暦年課税による贈与から、加算対象期間が段階的に7年へ延長されています。
宇野さん(相談者): 「110万円以内なら贈与税がかからない」ことと、「相続税の計算に戻されない」ことは別なんですね。
油野(税理士): その通りです。暦年課税では、基礎控除額110万円以下の贈与でも、加算対象期間内であれば相続財産に加算されます。節税効果を期待するなら、早めに、計画的に進めることが大切です。
生前贈与加算で押さえたい特徴
- 概要: 一定期間内に受けた暦年贈与を、相続財産に加えるルール。
- 改正点: 令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、加算対象期間が段階的に3年から7年へ延長。
- 対象: 贈与税がかかった財産だけでなく、110万円以下の贈与も対象になる。
- 対策: 贈与の時期、相手、制度選択を事前に整理し、相続全体でシミュレーションする。
孫への贈与と相続時精算課税の新しい110万円控除
宇野さん(相談者): 相続人ではない孫に贈与すれば、生前贈与加算の対象にならないと聞いたことがあります。
油野(税理士): 孫など、相続や遺贈で財産を取得しない人への贈与は、原則として生前贈与加算の対象外になりやすいです。ただし、生命保険金の受取人や遺言で財産を受け取る人になると、加算対象になることがあります。
大村(専門家): 不動産や保険を組み合わせる場合は、誰が何を受け取る設計なのか確認が必要です。孫への贈与だから安心、と単純には言い切れません。
宇野さん(相談者): 相続時精算課税にも、2024年から年110万円の基礎控除ができたと聞きました。
油野(税理士): はい。令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が設けられました。この基礎控除後の残額を相続時に加算して精算するため、毎年110万円以内の贈与を確実に続けたいご家庭では、選択肢になるケースがあります。
大村(専門家): ただし、相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税へ戻れません。不動産を贈与する場合は登録免許税や不動産取得税も関係するため、財産全体で判断しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 110万円以内の贈与なら申告も対策も不要ですか?
A. 贈与税の申告が不要でも、相続税の計算では生前贈与加算の対象になることがあります。贈与の事実を説明できるよう、振込記録や贈与契約書などを残しておきましょう。
Q2. 孫に贈与すれば、7年ルールは必ず避けられますか?
A. 必ず避けられるわけではありません。孫が生命保険金の受取人になっている場合や、遺言で財産を取得する場合などは、生前贈与加算の対象になる可能性があります。
Q3. 不動産も生前贈与できますか?
A. 可能です。ただし、贈与税のほか、登録免許税や不動産取得税などの実務コストが発生します。将来の相続税や売却方針まで含めて検討しましょう。
まとめ
生前贈与は有効な場面がある一方で、税制改正後は「毎年110万円なら安心」と単純に考えにくくなっています。
- 暦年課税を使う場合: 生前贈与加算の7年ルールを前提に、早めの計画と記録づくりを行う。
- 相続時精算課税を使う場合: 年110万円の基礎控除のメリットと、暦年課税へ戻れないデメリットを比較する。
贈与する相手、金額、保険や不動産の受け取り方によって結果は変わります。生前対策を始める前に、専門家と一緒に全体像を確認しておきましょう。
【専門家・大村武司の補足】 生前贈与は現金だけでなく、不動産や収益物件をどう引き継ぐかにも関わります。税制上の有利不利だけで判断すると、名義変更コストや将来の売却を見落とすことがあります。不動産を含む相続対策では、税務と不動産実務の両面から確認することが大切です。
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