「親の物忘れが増えてきた。遺言を書いてもらうにはもう遅い?」
「公正証書遺言なら、本当に相続トラブルを防げる?」
相続トラブルを防ぐうえで、遺言書はとても有効な手段です。ただし、いざ作ろうとすると「認知症でも作成できるのか」「費用はいくらかかるのか」「公正証書なら必ず安心なのか」など、判断に迷う点も多くあります。
今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、櫻司法書士法人の代表司法書士・辻田清之先生の解説を元に、公正証書遺言のメリット・デメリット、無効を防ぐ予備的文言、家族への想いを伝える付言事項について解説します。
【重要ポイント】公正証書遺言で失敗しないための基本
この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。
- 認知症でも作成できる場合がある: 15歳以上で、作成時に内容を理解できる遺言能力があれば、公正証書遺言を作れる可能性がある。
- 公正証書遺言は確実性が高い: 公証人が関与し、原本が公証役場に保管されるため、偽造・紛失・方式不備のリスクを抑えやすい。
- 費用と手間はかかる: 公証人手数料や専門家報酬で約8万〜25万円程度、文案のすり合わせや証人2名の準備が必要になる。
- 予備的文言が重要: 財産を渡す予定の人が先に亡くなった場合に備え、次に誰へ渡すかを指定しておく必要がある。
- 付言事項は家族への想い: 法的効力はないが、分け方の理由や感謝を残すことで、相続人の納得感につながる。
認知症でも公正証書遺言は作成できる?
宇野さん(相談者): 親の物忘れが増えてきた場合でも、公正証書遺言を作ることはできるのでしょうか? 認知症と診断されたら、もう遺言は無理なのかなと思っていました。
辻田(司法書士): 認知症だから必ず作れない、というわけではありません。遺言を作成するための基本は、15歳以上であること、そして作成時に遺言能力があることです。つまり、誰に何を渡すのか、自分が何を決めようとしているのかを理解できる状態であれば、作成できる可能性があります。
大村(専門家): 公正証書遺言の場合は、公証人が本人と面談し、意思確認を行います。名前が言えない、内容を理解できないという重い状態では難しいですが、初期の認知症などで意思疎通ができる場合は、すぐに諦めず専門家や公証役場へ相談することが大切です。
公正証書遺言のメリットとデメリット
宇野さん(相談者): 自分で書く自筆証書遺言と比べると、公正証書遺言にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
辻田(司法書士): 大きなメリットは、確実性の高さです。法律の専門家である公証人が関与して作成し、原本は公証役場に保管されます。そのため、形式の不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんのリスクを抑えやすくなります。また、亡くなった後の家庭裁判所での検認手続きも不要です。
大村(専門家): 一方で、費用と手間はかかります。自筆証書遺言を法務局で保管する制度は3,900円で利用できますが、公正証書遺言は公証人の手数料や司法書士などの専門家報酬を含め、約8万〜25万円程度かかることがあります。文案の打ち合わせも必要で、作成当日は証人2名の立ち会いも必要です。
公正証書遺言で押さえたい特徴
- 概要: 公証人が本人の意思を確認し、公正証書として作成する遺言。
- メリット: 原本が公証役場に保管され、検認手続きが不要。方式不備や紛失のリスクを抑えやすい。
- 費用: 公証人手数料や専門家報酬を含め、約8万〜25万円程度が目安。
- 注意点: 証人2名が必要。財産をもらう予定の人やその配偶者などは証人になれない。
宇野さん(相談者): 費用はかかりますが、相続手続きで使いやすい状態にしておく保険と考えると、検討する価値は大きそうですね。
大村(専門家): そうですね。特に不動産が関係する相続では、名義変更や売却に進むまでの手続きが複雑になりがちです。遺言書の確実性を高めておくことは、残された家族の負担を減らすことにもつながります。
予備的文言とは?受け取る人が先に亡くなる落とし穴
宇野さん(相談者): 公正証書遺言ならプロが作るので、内容面で失敗することは少ないと思っていました。それでも注意点はありますか?
大村(専門家): 実務では、財産を渡す予定だった人が遺言者より先に亡くなってしまうケースがあります。たとえば「すべて長男に相続させる」と書いていても、その長男が先に亡くなると、長男の子へ自動的に引き継がれるわけではありません。その部分の遺言が使えなくなり、結果として遺言者の意図とは違う分け方になって、相続人同士で揉めてしまうことがあります。
辻田(司法書士): そこで重要なのが、予備的遺言、つまり予備的文言です。「長男に相続させる。ただし、長男が私より先に死亡した場合は、長男の子に相続させる」といった形で、第2候補まで決めておきます。遺言書は作って終わりではなく、将来起こり得る事情まで想定しておくことが大切です。
予備的文言で想定しておきたいこと
- 第1候補: 誰に財産を渡すのかを明確にする。
- 第2候補: 第1候補が先に亡くなった場合、次に誰へ渡すのかを指定する。
- 不動産: 実家や収益物件など、分けにくい財産ほど事前の設計が重要になる。
- 見直し: 家族構成や財産状況が変わった場合は、遺言の内容も定期的に確認する。
付言事項とは?家族に想いを伝える心の遺言
宇野さん(相談者): 財産の分け方によっては、受け取る金額が少ない人が不満を持つこともありそうです。そういう場合にできる工夫はありますか?
辻田(司法書士): 付言事項を入れる方法があります。付言事項とは、遺言書の最後に添えるメッセージです。財産を分ける法的効力そのものはありませんが、「なぜこの分け方にしたのか」「家族にどのような想いを残したいのか」を伝えることができます。
大村(専門家): たとえば、生前に住宅資金を援助した子には少なめにし、長く介護をしてくれた子には多めに残す。その理由が何も書かれていなければ不満が出やすいですが、感謝や事情が言葉で残っていれば、受け止め方が変わることがあります。付言事項は、家族への最後のラブレターのようなものです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 公正証書遺言の内容は家族に内緒で作れますか?
A. はい、作成できます。公証人や証人には守秘義務があるため、遺言者が亡くなる前に内容が家族へ当然に伝わるものではありません。ただし、後の手続きに備えて、存在だけは信頼できる人に伝えるかどうか検討しておくと安心です。
Q2. 公正証書遺言を作った後で内容を変更できますか?
A. 変更や撤回は可能です。新しい日付で別の遺言書を作成した場合、内容が抵触する部分は原則として新しい遺言が優先されます。家族構成や財産の内容が変わったときは、放置せず見直すことが大切です。
Q3. 親が「まだ早い」と遺言を嫌がる場合はどう話せばいいですか?
A. 「遺言は亡くなる準備」ではなく、「残される家族が困らないための保険」と伝えるのが一つの方法です。認知症や急な体調変化が起きてからでは作成できない可能性があるため、元気なうちに話し合うことが重要です。
まとめ
公正証書遺言は、費用と手間がかかる一方で、相続時の混乱を防ぐ力が大きい遺言方式です。特に不動産が関わる相続では、内容の確実性と実行しやすさを重視して準備しておくことが大切です。
- 認知症が心配な場合: 判断能力があるうちに、早めに専門家へ相談する。
- 揉めない遺言にしたい場合: 予備的文言と付言事項まで含めて、家族が納得しやすい文案を検討する。
「うちは大きな財産がないから大丈夫」と思っていても、実家や少額の預金をめぐって意見が分かれることはあります。公証役場へ行く前に、不動産相続に詳しい専門家と文案を整理しておくと安心です。
【専門家・大村武司の補足】 遺言で指定した人が先に亡くなった場合、予定どおりに財産が引き継がれるとは限りません。特に「全財産を配偶者へ」「長男へ不動産を相続させる」といった内容では、万一に備えた予備的文言が重要です。誰に渡すかだけでなく、もしその人が先に亡くなっていたら誰に渡すのかまで決めておくことで、遺言の実効性が高まります。さらに付言事項で理由や感謝を残すことで、法的な設計だけでなく、家族の気持ちにも配慮した相続対策になります。
ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。







