「実家を相続したけど、兄は売りたい、弟は残したいと言って話が進まない…」
「とりあえず兄弟3人の共有名義にしたけれど、将来どうなるの?」
相続において最もトラブルになりやすいのが、不動産の「共有」です。安易に共有名義にしてしまうと、塩漬けの空き家を生むだけでなく、将来世代にまで禍根を残すことになりかねません。
今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、弁護士の石橋 駿一先生の解説を元に、不動産の共有状態のリスクとその解消方法について解説します。
【重要ポイント】不動産共有の対策リスト
この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。
- 自動的な共有: 遺言書がない場合、遺産は自動的に相続人全員の「共有」となる(民法898条)。
- 共有のリスク: 「売却・解体」には全員の同意、「リフォーム」には持分価格の過半数の同意が必要。
- 解決策(共有物分割請求): 話し合いが無理なら、裁判所に「現物」「換価」「代償」のいずれかで分割を請求できる。
- 推奨アクション: 第三者に安く売るより、親族間で持分を買い取り、単独名義に一本化するのが資産価値を守る最善策。
- 最強の予防策: 「遺言書」を作成しておけば、そもそも共有状態になるリスクを回避できる。
共有状態とは?遺言がないと自動的にトラブルへ
宇野さん(相談者): 大村さん、父が亡くなって実家を相続することになったんですが、特に遺言書はありませんでした。この場合、家はどうなるんでしょうか?兄弟は私を含めて3人います。
大村(専門家): 宇野さん、実は遺言書がない場合、その不動産は自動的にご兄弟3人の「共有状態」になります(民法898条)。これがトラブルの入り口なんです。
宇野さん(相談者): 自動的に、ですか。とりあえずみんなの物になるなら、平和で良いような気もしますが…。
大村(専門家): ところが逆なんです。共有状態になると、その不動産に対して一人では何も決められなくなります。例えば、宇野さんが「空き家にしておくのは維持費が無駄だから売りたい」と思っても、他のご兄弟が反対すれば売れません。
- 処分行為(売却・解体など): 全員の同意が必要
- 変更行為(リフォームなど): 持分価格の過半数の同意が必要
宇野さん(相談者): ええっ、全員の同意!?実は弟が「思い出の家だから残したい」と言っていて、兄は「金がないからすぐ現金化したい」と言ってるんです。これじゃあ何もできないじゃないですか。
大村(専門家): まさにそのパターンです。話し合いがまとまらず、10年近く空き家のまま放置され、固定資産税だけ払い続けているケースを本当によく見かけます。
共有物分割請求とは?法的に白黒つける3つの方法
宇野さん(相談者): 話し合いで解決しない場合、一生このままなんでしょうか?
大村(専門家): いえ、法的な解決策があります。それが「共有物分割請求」です。今回は弁護士の石橋先生にも解説をお願いしています。共有者の誰か一人が「分けてほしい」と声を上げれば、最終的には裁判所の判断で共有状態を解消できます。具体的には、以下の3つの分け方があります。
1. 現物分割(げんぶつぶんかつ)
- 概要: 土地を物理的に分ける方法。広い土地を「ここから右は兄、左は弟」といった形で分筆(ぶんぴつ)し、それぞれが単独で所有する。
- メリット: 土地そのものを取得できる。
- デメリット: 建物の場合は物理的に分けられないため使えないことが多い。
2. 換価分割(かんかぶんかつ)
- 概要: 不動産をすべて売却し、その現金を相続分に応じて分ける方法。
- メリット: 公平に分けやすく、最も一般的な方法。
- デメリット: 家を残したい人がいる場合は採用できない。
3. 代償分割(だいしょうぶんかつ)
- 概要: 誰か一人が不動産をまるごと取得し、他の相続人に対して代わりにお金(代償金)を払う方法。
- メリット: 家を守りたい人が住み続けられる。
- デメリット: 取得する人に、他の兄弟へ払うだけの現金が必要。
大村(専門家): 宇野さんの場合、もし弟さんが「家を残したい」と強く願うなら、弟さんが家を相続し、宇野さんとお兄さんに現金を払う「代償分割」が現実的かもしれませんね。
共有持分の買取、売却は「誰に」売るかが重要
宇野さん(相談者): もし弟に現金を払う力がなかったらどうすればいいですか?実はネットで「共有持分買い取ります」という業者を見つけたんですが、自分の持ち分だけ売ってしまおうかと…。
大村(専門家): うーん、不動産業者の立場から言うと、正直おすすめしません。業者が共有持分だけを買い取る場合、その不動産は自由に使えないわけですから、市場価格よりかなり安く買い叩かれます。
宇野さん(相談者): やっぱり安くなりますか…。
大村(専門家): はい。石橋先生も推奨していましたが、一番良いのは「親族間での売買」です。もし宇野さんが将来その家を活用したいなら、お兄さんの持分を少しずつでも買い取って、ご自身の持分を増やしていくことをお勧めします。
- 過半数を取れば: 管理やリフォームを自分で決められるようになる。
- 全部を取れば: 自由に売却や活用ができるようになり、資産価値が最大化する。
宇野さん(相談者): なるほど。他人である業者や第三者が入り込むと、余計に話し合いがこじれそうですもんね。
大村(専門家): その通りです。第三者に持分が渡ってしまうと、いざ売却したい時にその業者から高値での買取を要求されるなど、泥沼化するリスクがあります。親族だけで解決できるうちに動くのが鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. リフォームに必要な「過半数の同意」は多数決(人数)ですか?
A. いいえ、人数ではなく「持分価格の過半数」です。例えば3人で共有していても、Aさんが2/3、BさんとCさんが1/6ずつの場合、Aさん一人の判断で過半数となるため、リフォーム等を決定できます。逆に、持分が少ないと意見を通すのは難しくなります。
Q2. 共有状態を避けるための予防策はありますか?
A. 「遺言書」を作成することが最強の予防策です。遺言で「自宅は長男に、預金は次男に」と指定されていれば、そもそも共有状態にはなりません。日本で遺言を書いている人は約1割と言われていますが、残りの9割は自動的に共有リスクにさらされています。
Q3. 共有物分割請求には裁判が必要ですか?
A. 必ずしも最初から裁判になるわけではありません。まずは弁護士などの専門家を交えて交渉(協議)を行います。それでもまとまらない場合に、調停や訴訟(裁判)へと進みます。民法256条により「いつでも分割を請求できる権利」が認められているため、最終的には必ず解決できます。
まとめ
不動産の共有は、放置すればするほど解決が難しくなり、資産価値を損なう原因になります。今日のポイントを整理すると以下の通りです。
- 遺言がない場合: 自動的に共有になるリスクを認識する。
- 揉めている場合: 「共有物分割請求」という法的権利があることを知る。
- 解決の方向性: 第三者に安売りする前に、親族間で持分をまとめて単独名義化を目指す。
「うちは兄弟仲が良いから大丈夫」と思っていても、配偶者の意見や経済状況の変化で関係は簡単に変わります。問題が複雑化する前に、早めに専門家へ相談することをお勧めします。
【専門家・大村武司の補足】 2024年4月1日から相続登記が義務化され、放置されていた「共有名義」の不動産に対しても国が管理強化に乗り出しています。記事内で「遺言があるのは1割」とお話ししましたが、裏を返せば9割の方がトラブル予備軍です。もし今、共有状態で困っている、あるいは将来そうなりそうな場合は、私の開催する無料セミナーや、お近くの司法書士・弁護士に一度ご相談ください。「共有の解消」は早いほど選択肢が多く残されています。
ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。







