「兄弟が亡くなり、長年一人暮らしだった実家を相続することになった」
「親の相続とは勝手が違い、どう進めるのが正解か分からない」
兄弟姉妹間の相続は、親からの相続に比べて特例が使いづらく、さらに「見えない借金」のリスクも潜んでいるため、非常に慎重な判断が求められます。
今回は、不動産相続コンサルタントを行うウエストエリア株式会社の事例をもとに、兄弟の自宅を売却する際に強力な選択肢となる「限定承認」について解説します。
※本事例のお客様は、最終的に単純承認を選択され「空き家の3,000万円控除」の適用を受けられましたが、本記事では「もし限定承認を選択していた場合、どのような結果になっていたか」を検証してご紹介します。
1. 物件概要とご相談の背景
【物件概要】
- 所在地: 大阪府大阪市
- 物件種別: 古家付土地(建物は旧耐震)
- 備考: 被相続人(亡くなった方)のご自宅
- 売却価格: 2,000万円台
- 譲渡益(儲け): 約2,000万円
【ご相談の状況】
被相続人はお子様がいらっしゃらない90代の女性です。相続人は、亡くなった方の「ご兄弟3人」でした。
ご相談に来られる前、他社からは「長男が単独名義で相続して売却し、諸経費を引いた後のお金を兄弟3人で均等に分ける(換価分割)」という提案を受けておられました。均等に分けることが約束されるため、非常に分かりやすいのが利点です。
2. 【他社提案】そのまま長男が売却して「換価分割」した場合
仮に2,200万円で売却し、2,000万円の不動産譲渡益が発生した場合、翌年に確定申告をして不動産譲渡税を納める必要があります。
ご兄弟は国民健康保険に加入されていたため、不動産の売却益が計上されると、翌年の保険料が上限まで上がり、さらに医療費の窓口負担割合まで上がってしまうリスクがありました。
▼概算シミュレーション(他社提案:換価分割の場合)
| 内容 | 金額 |
| 売却価格 | 2,200万円 |
| 譲渡税等 | ▲ 400万円 |
| 保険料増加 | ▲ 225万円 ※3人分 |
| 申告代(税理士等) | ▲ 60万円 ※3人分 |
| 諸経費 | ▲ 90万円 |
| 最終的な手取り | 1,425万円 |
3. 【当社の提案】兄弟の自宅相続に「限定承認」を勧める理由
ウエストエリアでは、兄弟の自宅を売却する場合には必ず「限定承認」をご提案します。(※借金などが無く、親の自宅を売却する時にはあえて提案しません)
限定承認を選択すると、税務上は「亡くなった方自身が自宅を売却した」とみなされます(=みなし譲渡)。
これにより、原則として相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に、亡くなった方の代わりに確定申告を行う「準確定申告」が必要になります。この準確定申告において、亡くなった方の「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用を受けることができるのです。
▼概算シミュレーション(当社提案:限定承認を選択した場合)
| 内容 | 金額 |
| 売却価格 | 2,200万円 |
| 譲渡税等 | 0万円 |
| 保険料増加 | 0万円 |
| 申告費用 | ▲ 20万円 ※準確定申告 |
| 諸経費 | ▲ 140万円 |
| 最終的な手取り | 2,040万円 |
▶ 限定承認の仕組みを活用することで、通常売却(換価分割)より【約615万円】も手取りが増加する計算になります。
限定承認を選択する際の「重要な留意点」
非常にメリットの大きい限定承認ですが、税務上、必ず知っておかなければならない注意点があります。
それは、「相続人が5年以内に売却すると『短期譲渡所得』になる」という点です。
限定承認をした場合、税務上は「被相続人から相続開始日に、時価で『売買により取得した』」とみなされます。そのため、相続後すぐに第三者へ売却する予定の場合、所有期間が5年以下となり、税率が大きく跳ね上がります。
- 長期譲渡所得(5年超): 20.315%
- 短期譲渡所得(5年以下): 39.63%
このように税率がほぼ倍になるため、売却のタイミングや取得費の計算には、専門家による緻密なシミュレーションが不可欠です。
4. 【もう一つの理由】兄弟間の相続に潜む「見えない債務」のリスク
私たちが兄弟間の相続で限定承認をご提案するのには、税金対策以外にもう一つ大きな理由があります。
兄弟姉妹が相続人となる場合、長年同居していないことも多く、「亡くなった方の財産や負債の全体像を正確に把握できていないケース」が少なくありません。
金融機関からの借入であれば、個人の信用情報などから把握できる場合もあります。しかし、以下のような債務は外部からは非常に見えにくいものです。
- 個人間の借入
- 損害賠償債務
- (会社経営者だった場合)法人の借入に対する連帯保証債務
これらを把握せずに「単純承認」してしまうと、後から発覚した多額の借金を相続人が背負うという大きなリスクになり得ます。
このように、把握できていない債務が存在する可能性を考慮し、万一の事態に備える“保険”として限定承認を選択するという考え方は、兄弟相続において非常に理にかなっています。
5. まとめ:兄弟の相続は、手続き前に専門家へ相談を
兄弟の不動産相続は、
- そのまま売却して「換価分割」する
- 限定承認を選択して「みなし譲渡+特例」を活用する
- (要件を満たせば)空き家の3,000万円控除を適用する
どの方針を選ぶかで、手元に残るお金が数百万円単位で変わります。また、見えない借金からご自身を守るための防衛策(限定承認)の検討も必要です。
ウエストエリア株式会社では、こうした複雑な税務のシミュレーションから、限定承認の手続きをサポートする専門家のご紹介まで、お客様にとって最も安全で手取りを最大化するプランをご提案いたします。手続きを進めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。
ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。







