「何年も前に亡くなった父名義のまま、実家が放置されている」
「その実家に住んでいた兄弟が亡くなってしまった」
このような、相続が連続して発生している状況を「数次相続(すうじそうぞく)」と呼びます。手続きが複雑になるため、「とりあえず一番簡単な方法で名義変更して売ってしまおう」と考えがちですが、少しお待ちください。
今回は、不動産相続コンサルタントを行うウエストエリア株式会社にご相談いただいた事例の中から、「相続登記の順番と遺産分割の工夫によって、手取り額が1,000万円以上アップしたケース」をご紹介します。
1. 物件概要とご相談の背景
【物件概要】
- 所在地: 大阪府茨木市
- 物件種別: 古家付土地(建物は旧耐震)
- 備考: 被相続人(長男)のご自宅でしたが、名義は「すでに亡くなっているお父様」のままでした。
- 売却価格: 4,000万円台
- 譲渡益(儲け): 約4,000万円
【ご相談の状況】 今回亡くなられた長男(70代)にはお子様がいらっしゃらず、相続人は妹である長女(大阪在住・相談者)と、次女(福岡在住)のお二人でした。
誰も実家を利用しないため売却をご希望でしたが、「次女は病気で入院しているため、契約などの手続きで極力負担をかけたくない」という長女からのご相談でした。
このような場合、「誰が不動産を相続するのか」「遺産分割をどうするのか」が手取り額を左右する最大のポイントになります。一般的には「①長女が相続する」か「②次女が相続する」の2択と思われがちですが、実は「③亡くなった長男がいったん相続する」という第3の選択肢があります。
2. 【一般的なケース】長女が直接相続して「換価分割」した場合
お父様の名義から、長女へダイレクトに相続登記(名義変更)を行うと、登記のコストは一番安く済みます。次女が入院中のため、長女が単独で相続して売却手続きを行い、売れたお金を半分ずつ分ける(換価分割)のが最も公平で、よく選ばれる方法です。
しかし、約4,000万円の譲渡益が出るため、翌年には多額の譲渡税がかかり、国民健康保険料も上限まで上がってしまいます。
▼概算シミュレーション(長女が直接相続+換価分割)
| 内容 | 金額 |
| 売却価格 | 4,600万円 |
| 譲渡税等 | ▲ 800万円 |
| 保険料増加 | ▲ 200万円 ※2人分 |
| 申告代(税理士等) | ▲ 40万円 ※2人分 |
| 相続登記費用 | ▲ 25万円 |
| 諸経費 | ▲ 375万円 |
| 最終的な手取り | 3,160万円 |
※原則として、換価分割の場合は不動産を単独で相続しても、次女も確定申告が必要になります。
3. 【特例を活用】長男を経由して「代償分割」した場合
税金や保険料の負担を減らすためには、「相続空き家の3,000万円控除」を利用する必要があります。 兄弟の自宅を売却してこの特例を使うには、「すでに亡くなっている長男が、一度お父様から実家を相続した」という形をとる必要があります。(※一人暮らしであった長男から長女が相続することで、特例適用の可能性が生まれます)
次女に負担をかけないよう、長女が単独で相続して次女へ現金を払う「代償分割」を選択した場合のシミュレーションは以下の通りです。
▼概算シミュレーション(長男経由+代償分割)
| 内容 | 金額 |
| 売却価格 | 4,600万円 |
| 譲渡税等 | ▲ 200万円 |
| 保険料増加 | ▲ 100万円 |
| 申告代 | ▲ 20万円 ※1人分 |
| 相続登記費用 | ▲ 25万円 |
| 諸経費 | ▲ 375万円 |
| 最終的な手取り | 3,880万円 |
▶ ①の一般的なケースより、手取りが【約720万円】増えます。
知っておくべき「登録免許税の免税措置」
「長男を経由すると、相続登記の費用(税金)が2回分かかって損をするのでは?」と心配されるかもしれませんが、実は「相続により土地を取得した方が、相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置(令和9年3月31日まで)」という制度があるため、長男名義にするための登録免許税は非課税となります。
4. 【当社の提案】長男を経由し、事前に割合を決めた「換価分割」を選択
ウエストエリアでは、手取りをさらに最大化するために、「一度亡くなった長男が相続し、その後、換価分割を選択して遺産分割協議書を作成する」という方法をご提案しました。
換価分割は遺産分割の一形態ですが、「あらかじめ不動産を売却(換価)する前までに取得割合を定めておく」ことで、その割合に応じて長女と次女のそれぞれが「相続空き家の3,000万円控除」を受けることができるのです。
▼概算シミュレーション(当社提案:長男経由+割合決定済みの換価分割)
| 内容 | 金額 |
| 売却価格 | 4,600万円 |
| 譲渡税等 | 0万円 |
| 保険料増加 | 0万円 |
| 申告代 | ▲ 40万円 ※2人分 |
| 相続登記費用 | ▲ 25万円 |
| 諸経費 | ▲ 375万円 |
| 最終的な手取り | 4,160万円 |
▶ 特例を2人で利用することで譲渡税と保険料の増加がゼロになり、最初のケースと比べて【1,000万円】も手取りが増加しました。
さらに、今回の事例では行政の「解体費の補助金(40万円)」も受け取ることができたため、最終的な手取り額はトータルで【1,040万円のアップ】となりました。
非常に重要な注意点
もし、不動産を譲渡(売却)する日までに取得割合が定まっていなかった場合、長女のみしか特例の対象になりません。また、もし何らかの理由で「相続空き家の3,000万円控除」が適用できない場合でも、「限定承認」を選択することで同じような効果を得られる可能性があります(限定承認の事例は別の記事をご参照ください)。
5. まとめ:相続登記のハンコを押す「前」にご相談を!
何年も放置された名義の不動産や、兄弟間の相続においては、「誰名義で登記するか」「売却する前にどのような遺産分割協議書を作るか」によって、支払う税金が劇的に変わります。
登記を終えてしまってからでは、このような特例のダブル適用などの対策を打つことはできません。
手取りを最大限に残し、ご家族への負担を減らすためには、相続登記を行う前に、不動産・相続・税金に強い「ファイナンシャルプランナー」にご相談いただくことが最も確実です。
ウエストエリア株式会社では、お客様の状況に合わせた最適なプランを総合的にご提案いたします。複雑な不動産相続でお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。
ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。







