「遺言は、何歳から残せるの?」
「自分で書いた遺言書は、見つけてもらえなければ意味がない?」
遺言書は、亡くなった後に財産をどう分けるか、誰に何を残すかを決めておく「最後の意思表示」です。相続対策というと高齢になってから考えるものと思われがちですが、法律上は満15歳から遺言をすることができます。
今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、櫻司法書士法人の代表司法書士・辻田清之先生の解説を元に、自筆証書遺言の書き方、よくある失敗、家庭裁判所の検認、法務局の自筆証書遺言書保管制度、公正証書遺言の安心感について解説します。
【重要ポイント】自筆証書遺言で失敗しないための基本
この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。
- 遺言は満15歳から可能: 民法第961条で「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と定められている。
- 自筆証書遺言は方式が重要: 全文・日付・氏名を自書し、押印する必要がある。方式を外すと無効になるリスクがある。
- 自宅保管は見つからないリスク: 仏壇の引き出しの裏など、誰にも分からない場所に隠すと、遺言がないのと同じ結果になりかねない。
- 検認には時間がかかる: 自宅保管の自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要で、手続きに1〜2か月ほどかかる場合がある。
- 安心確実なら公正証書遺言: 法務局保管制度も有効だが、内容面まで確実性を高めるなら公正証書遺言がおすすめ。
遺言は15歳から残せる|民法961条の基本
宇野さん(相談者): 遺言書って、高齢になってから書くものだと思っていました。15歳から残せるというのは本当なんですか?
辻田(司法書士): はい。本当です。民法第961条には「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と明文で定められています。遺言は契約とは違い、相手方を必要としない単独の法律行為ですので、15歳になれば一人で行うことができます。
大村(専門家): 宇野さんもクイズでは18歳からと予想していましたが、正解は15歳からでしたね。若い頃に遺言を考える方は少ないかもしれませんが、法律上は可能ということです。
宇野さん(相談者): どうして15歳なんでしょうか?
辻田(司法書士): かつての民法では、男子17歳、女子15歳から婚姻ができるというルールがありました。その低い方の年齢である15歳になれば、遺言という法律行為もできると考えられてきたと言われています。なお、15歳未満の方が作った遺言は、内容がしっかりしていても遺言能力がないため無効になります。
自筆証書遺言の書き方|全文・日付・氏名・押印が必要
宇野さん(相談者): 今回は「自筆証書遺言」がテーマなんですよね。自分で書くなら、紙に希望を書いておけば大丈夫なんでしょうか?
大村(専門家): 自筆証書遺言には、決められた方式があります。遺言者が全文、日付、氏名を自書し、これに印鑑を押さなければなりません。手軽な一方で、方式に不備があると使えない可能性があるので注意が必要です。
辻田(司法書士): 印鑑は実印でなければならないという規定はありません。ただし、自筆証書遺言は後からトラブルになりやすい面があります。本人が書いたことの確実性を高めるため、できれば実印を押し、印鑑証明書も一緒に保管しておく方がベターです。
自筆証書遺言で押さえたい形式
- 全文: 原則として遺言者本人が自分で書く。
- 日付: 作成日が特定できる年月日を書く。
- 氏名: 遺言者本人の氏名を自書する。
- 押印: 認印でも形式上は可能だが、トラブル予防には実印と印鑑証明書の保管も検討する。
宇野さん(相談者): 自分で書けるのは便利ですが、意外と細かいんですね。
辻田(司法書士): そうです。費用は紙代だけで済むというメリットがありますが、書き方に不備があると無効になったり、紛失したり、隠されたりするリスクがあります。手軽さとリスクの両方を理解しておくことが大切です。
自宅保管の落とし穴|見つからない遺言と訂正ミス
宇野さん(相談者): 自分で保管する場合、見つけてもらえないこともあるんですか?
辻田(司法書士): 多いと思います。自筆証書遺言を書く方は、誰にも言わずに秘密にしておきたい方も少なくありません。たとえば「仏壇の引き出しの2段目の裏側に、こっそりテープで貼っておく」というような保管方法では、誰が見つけるのかという話になってしまいます。
大村(専門家): 見つからなければ、遺言はなかったのと同じような結果になってしまいます。せっかく意思を残していても、相続人が知らないまま終わるのは大きなリスクですね。
宇野さん(相談者): 書く内容でも失敗しやすい点はありますか?
辻田(司法書士): 誰に財産を残すのかが正確に分かるようにすることが大切です。たとえば「妻に全財産を相続させる」と書いた場合でも、事実婚など事情によっては判断に迷う可能性があります。正確に分かるのであれば、生年月日や関係性を書いておくと、特定の確実性が上がります。
宇野さん(相談者): 書き間違えたときは、線を引いて直せばいいのでしょうか?
辻田(司法書士): 自筆証書遺言は、訂正方法が非常に複雑です。実際に、3か所の訂正がすべて間違った方法だったため、訂正が無効になったケースもありました。訂正が無効になると、最初に書いた内容が残ることになります。大きく間違えた場合は、訂正せずに最初から書き直す方が安全です。
検認とは何か|手続きに1〜2か月かかることも
宇野さん(相談者): 文字起こしの中で「検認」という言葉が出ていました。これは何をする手続きなんですか?
大村(専門家): 検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する手続きです。自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則としてこの検認をしないと、相続手続きに使えません。
辻田(司法書士): ただし、検認は遺言が有効かどうかを判断する手続きではありません。あくまで遺言書の状態を確認する手続きです。さらに、手続きに1か月から2か月ほどかかることがあります。亡くなった方の預金がすぐに必要な場合などは、時間がかかる点に注意が必要です。
宇野さん(相談者): 遺言書があっても、すぐに使えるとは限らないんですね。
辻田(司法書士): はい。だからこそ、作成方法だけでなく、保管方法や相続開始後の手続きまで考えておくことが大切です。
法務局保管制度のメリットとデメリット
宇野さん(相談者): 2020年から、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まったんですよね。
大村(専門家): はい。2024年の1年間では、約2万3,000件の申請があったそうです。利用される方も増えていますね。
辻田(司法書士): 法務局保管の大きなメリットは、公正証書遺言と同じように検認が不要になることです。相続開始後、検認を待たずに手続きへ進みやすくなります。費用も保管申請は3,900円と比較的利用しやすい金額です。
法務局保管制度の特徴
- 検認: 法務局で保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要。
- 費用: 保管申請の手数料は3,900円。
- 保管: 紛失、改ざん、隠蔽の心配を減らせる。
- 方式チェック: 日付、署名、押印など、形式面は法務局で確認してもらえる。
- 注意点: 遺言内容の相談には乗ってもらえず、必ず本人が法務局へ行く必要がある。
宇野さん(相談者): 形式面は見てもらえるけれど、内容までは相談できないんですね。
辻田(司法書士): その通りです。法務局で確認してもらえるのは、日付や自書などの方式的な部分です。「この内容で相続トラブルを防げるか」「不動産の指定が適切か」といった内容面は、司法書士など専門家に相談する必要があります。また、法務局は出張してくれませんので、本人が法務局へ行かなければならない点もデメリットです。
安心確実を重視するなら公正証書遺言
宇野さん(相談者): 辻田先生としては、どの遺言がおすすめですか?
辻田(司法書士): 安心確実を取るのであれば、公正証書遺言をおすすめしたいです。公証役場で作成し、そこで保管してもらう方式です。自筆証書遺言より手間や費用はかかりますが、確実性を重視する方には向いています。
大村(専門家): 不動産がある相続では、遺言書の内容が曖昧だと、相続登記や売却の場面で困ることがあります。法務局保管制度は便利ですが、内容まで整えたい場合は、公正証書遺言や専門家への相談を検討したいですね。
宇野さん(相談者): 「自分で書けるから簡単」と考えすぎず、どう保管するか、内容が本当に使えるかまで考えることが大切なんですね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺言書は本当に15歳から作れますか?
A. はい。民法第961条で、15歳に達した者は遺言をすることができると定められています。15歳未満の方が作った遺言は、内容がしっかりしていても遺言能力がないため無効になります。
Q2. 自筆証書遺言を訂正しても大丈夫ですか?
A. 訂正自体は可能ですが、方法が非常に複雑です。訂正方法を誤ると、訂正部分が無効になる可能性があります。大きな書き間違いがある場合は、無理に直すより最初から書き直す方が安全です。
Q3. 法務局保管制度を使えば、内容まで有効と保証されますか?
A. いいえ。法務局で確認してもらえるのは、日付、自書、署名、押印などの方式的な部分です。遺言の内容が適切か、有効か、相続トラブルを防げるかまでは保証されません。内容面は専門家に相談するのがおすすめです。
まとめ
自筆証書遺言は、費用を抑えて自分で作成できる一方、方式の不備、発見されないリスク、訂正ミス、検認に時間がかかる点に注意が必要です。
- 自分で書く場合: 全文・日付・氏名・押印などの方式を守り、保管場所と発見されやすさまで考える。
- 確実性を重視する場合: 法務局保管制度や公正証書遺言を検討し、内容面は司法書士など専門家に確認する。
遺言書は「書いたら終わり」ではありません。残された家族が実際に使える形になっているか、不動産や預金の手続きで困らない内容になっているかまで確認しておきましょう。
【専門家・大村武司の補足】 不動産を含む相続では、遺言書の書き方ひとつで相続登記や売却の進めやすさが変わります。「誰に何を残すか」を正確に示すだけでなく、遺言書が確実に見つかり、手続きに使える状態で保管されていることが大切です。不安がある場合は、早めに司法書士などの専門家へ相談しましょう。
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