相続の生前対策は何から始める?認知症に備える家族信託と不動産評価

「親も高齢になってきたし、そろそろ相続の準備をした方がいいのかな…」

「実家が空き家になったら、どうやって管理や活用をすればいいんだろう?」

親の老後や実家の行く末について、漠然とした不安を抱えていませんか?「まだ元気だから大丈夫」と後回しにしていると、いざという時に財産が動かせず、家族間で大きなトラブルになることがあります。

今回は、センチュリー21ウエストエリア代表の大村武司と、税理士・司法書士・中小企業診断士という各分野のプロフェッショナル陣が、リスナーからの質問にお答えする形で「本当に有効な生前対策」と「不動産の活用法」について解説します。

【重要ポイントまとめ】元気なうちにやるべき生前対策リスト

この記事の要点は以下の通りです。時間のない方はここだけチェックしてください。

  • 現状把握(棚卸し): プラスの財産とマイナスの借金を洗い出し、相続税がかかるかシミュレーションする。
  • 不動産の「時価」を把握: 相続税の計算に使う「路線価」と、遺産分割で使う実際の売買価格「時価」は大きく異なるため、事前に査定しておく。
  • 認知症対策(家族信託): 親が認知症になると不動産売却や預金引き出しができなくなるため、元気なうちに家族に財産管理を託す契約を結ぶ。
  • 空き家活用(民泊): 相続した不動産を民泊にする場合、小規模事業者持続化補助金などの支援制度を活用できる可能性がある。

1. 相続の生前対策は「現状把握」と「不動産の時価」から

宇野さん(相談者): 大村さん、親が70代になり、そろそろ生前の相続対策をしておきたいのですが、何から手をつければいいのか全く分かりません。

大村(専門家): 宇野さん、非常に良いタイミングですね。まずは税金面のアプローチから、税理士の鎌田先生に聞いてみましょう。

鎌田(税理士): はい。相続対策で最も重要な第一歩は、ご自身の財産の「現状把握(棚卸し)」をしっかりしていただくことです。まずは預金や不動産といったプラスの財産、そして借金などのマイナスの財産をすべて洗い出します。その上で「相続税がかかるのか? かかるならいくらか?」を把握して初めて、具体的な節税や分割の対策が立てられます。

宇野さん(相談者): なるほど。まずは財産リストを作るんですね。実家の土地の値段は、送られてくる固定資産税の紙を見れば分かりますか?

大村(専門家) 実はそこが大きな落とし穴なんです!相続税の計算には「路線価」や「固定資産税評価額」を使いますが、兄弟間で遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)や遺留分の計算の時に使われるのは、実際に市場で売買できる価格、つまり「時価」なんです。

宇野さん(相談者): 税金の計算と、兄弟で分ける時の値段が違うということですか?

大村(専門家) そうなんです。例えば大阪市内などの都市部では、路線価の倍以上の「時価(実勢価格)」で取引されている場所も少なくありません。「路線価では3,000万円だから、長男が家をもらって次男に現金1,500万円を渡せば平等だね」と思っていても、実際の時価が6,000万円だった場合、次男から「不公平だ!」と不満が出てトラブルになります。生前に不動産会社に査定を依頼し、本当の「時価」を知っておくことが最大のトラブル予防になります。

2. 家族信託で認知症リスクに備える!資産凍結を防ぐ方法

宇野さん(相談者): 財産の把握のほかに、法的にやっておくべきことはありますか?

大村(専門家) ここ数年、非常に重要度が高まっているのが「認知症対策」です。司法書士の安倍先生、解説をお願いします。

安倍(司法書士): はい。親御さんが認知症になって判断能力を失うと、銀行口座が凍結されて預金が引き出せなくなったり、老人ホームの入居費用のために実家を売りたくても売却できなくなったりします。この「資産凍結」を防ぐための生前対策が「家族信託(かぞくしんたく)」です。

宇野さん(相談者): 遺言書とは違うんですか?

安倍(司法書士): 遺言書は「亡くなった後」に効力を発揮するものですが、家族信託は「生きている間」の財産管理を信頼できる家族(子供など)に託す契約です。これを結んでおけば、親が認知症になった後でも、託された子供が親のために実家を売却して介護費用に充てることができます。遺言よりも自由度が高く、ご家族の状況に合わせたオーダーメイドの契約が作れるのが強みです。

大村(専門家) 注意点としては、家族信託は「契約」なので、親御さんの判断能力がしっかりしている元気なうちにしか結べないということです。認知症になってからでは手遅れなので、早めに動くことが重要です。

3. 空き家の民泊運営と使える補助金について

宇野さん(相談者): もし実家を相続して空き家になった場合、売るのではなく「民泊」として運用してみたいのですが、何かアドバイスはありますか?

大村(専門家) 実は私自身も民泊の経営を行っています。運営のコツとしては、需要に合わせて価格を変動させることです。週末や祝日はもちろんですが、インバウンド層(中国や韓国など)の祝日を把握して価格を上げる工夫が売上に直結します。また、意外と日本人の宿泊者も多いので、テレビを置いたり、持ち運びが大変な「折りたたみ式ベビーベッド」を用意しておくと、ファミリー層の予約が取りやすくなりますよ。

宇野さん(相談者): 設備を整えるとお金がかかりそうですが…。

大村(専門家) そこで活用したいのが補助金です。中小企業診断士の浜口先生、いかがでしょうか。

浜口(中小企業診断士): はい。自治体によっては民泊施設の環境整備に対する独自の補助金を出している場合があります(例:大阪府の特区民泊施設の環境整備促進事業など)。また、従業員が5名以下の小規模事業者であれば、国の「小規模事業者持続化補助金」を活用できる可能性があります。建物の直接的な改装費には使えなくても、「民泊を始めました」という宣伝用のパンフレット作成やウェブサイト制作といった「広告宣伝費」に使えるため、初期費用を抑える強い味方になります。

4. よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産の「時価」を知るにはどうすればいいですか?

A. 最も手軽で現実的なのは、地元の不動産会社に「無料査定」を依頼することです。直近の取引事例を基にした実勢価格(時価)が分かります。裁判などで厳密な法的根拠が必要な場合は、数十万円の費用をかけて「不動産鑑定士」に鑑定評価を依頼する必要があります。

Q2. 家族信託と成年後見制度はどう違うのですか?

A. どちらも認知症対策として機能しますが、柔軟性が異なります。「成年後見制度」は家庭裁判所の監督下に入り、財産を守る(減らさない)ことが目的となるため、投資や積極的な不動産売却のハードルが高くなります。一方、「家族信託」は家族間の契約に基づき、生前に定めた目的に沿って柔軟に財産(不動産の売却や修繕など)を運用・処分できます。

Q3. 民泊を始めるための補助金はどこで調べられますか?

A. お住まいの(または物件がある)都道府県や市区町村のホームページ、または商工会議所の窓口で最新情報を確認できます。「小規模事業者持続化補助金」は通年で公募されていますが、申請には事業計画書の作成が必要になるため、中小企業診断士や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

親が元気なうちにやっておくべき生前対策は、決して「縁起でもない話」ではなく、残される家族が揉めずに安心して暮らすための「愛情」です。

  1. 税金と分割の準備: 財産の棚卸しを行い、不動産の「時価」を不動産会社に査定してもらう。
  2. 認知症への備え: 手遅れになる前に、専門家を交えて「家族信託」の組成を検討する。
  3. 不動産の活用: 空き家を民泊などで活用する際は、利用できる補助金制度を賢く使う。

一人で抱え込まず、税理士、司法書士、不動産会社が連携している相談窓口を活用して、全体最適のプランを立てることから始めてみてください。

ウエストエリア株式会社では、不動産売却のノウハウだけでなく、税理士や弁護士、司法書士などの専門家と連携し、お客様の手元に最大限の資産を残すための最適なプランをご提案いたします。「遺言で不動産をもらったけれど、どうすればいいか分からない」「少しでも有利に売却したい」という方は、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。

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